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2022年5月13日

大分県杵築市 唯一SS消滅のピンチに住民が取った方法

※ こちらの記事は、株式会社月刊ガソリンスタンド社よりご提供いただいた記事となります。



大分県杵築市大田地区(旧・大田村)の住民有志が「合同会社」を立ち上げ、地域に唯一存在するSSの存続を目指した。


「SS過疎地」問題は全国的に見受けられ、たびたび世間の耳目を集める。この大田地区の例がユニークなのは、「クラウドファンディング」を立ち上げ、SS設備更新の資金を募った事もある。


現地で、有志の皆さんに取材した。



地域SS消滅の危機 住民が会社設立 クラファンで資金を募る


大田地区・唯一のSSは、小関石油(出光系)。地区に50年以上根差した、住民お馴染みの店だ。小関隆範社長と、和代夫人は、次のように話す。


「私たち夫婦も、齢80をこえました。そして、地下タンクの更新が2022年6月に期限を迎えるんです。二人で話し合って、『2021年末に、店を閉じようか』といっていたんですよ」


この意見に異議を唱えられる人はいないだろう。小関夫妻は出来得る限り、地域に貢献してきたのだ。


しかし太田地区は、自家用車など交通手段を持たない一人暮らしの高齢者や、夫婦のみの世帯も多い。これまでずっと、石油ファンヒーターやお湯を沸かすボイラーに使う灯油は、小関石油が配達していた。


もし唯一SSがなくなってしまったら、基幹産業である農業はもちろん、林業や建設業に使う重機への給油もままならない。地域住民への影響は多大で、ひいては生活水準の低下をも招く。


そこで、同地区の住民自治協議会である「大田ふるさとづくり協議会」は、この課題解決のため市や県、商工会、大分県石油組合、卸売事業者、そして小関石油と連携し、協議を重ねたうえで、協議会を主体とした「合同会社おおた夢楽(むら)」を設立。SS存続に向けて動き始めた訳だ。


手始めに、避けては通れない地下タンク改修にかかる資金を調達すべく、ふるさと納税を活用した仕組みの「ガバメント・クラウドファンディング」の実施を始めた。


また、SSが存続できたあかつきには、灯油配達事業の効率化が欠かせない。家庭用オイルタンクや灯油ローリーなど施設面の整備を行うため、並行して県・市の補助金を活用する事も模索。具体的な行動を続けた。




合同会社おおた夢楽の代表社員・吉廣和男さんは、次のように話す。


「おおた夢楽を立ち上げたのが、法人としたのが、去年の11月。全ては地域SSの存続のためですが、正直、道のりはけわしかったです。地元の皆と幾度となく話し合ったのですが、この話はまとまらないと諦めかけた事も幾度とありました。目下、メインのSS収益として灯油・軽油の配送があるのですが、もし新規に『灯油・軽油ステーション』のようなものを立ち上げると試算すると、約500万円かかる。小関石油の地下タンク改修に見込む金額も、約500万。ならば『店頭でのガソリン販売も見込める、小関石油活用・継続』案の方が合理的です」


「けれども、小関石油の設備を継続するのなら法人設立をしなければならない。誰が運営するんだ、と。当然、乙四資格者も欠かせないが、人材はどこにいるんだ、と。地域の人口は減少していく、将来性があるのか、と。世の中は脱炭素の動きだぞ、と。紛糾しましたよ」


「喧々諤々やりながらも、中小企業診断士もまじえ、『ひとまず10年間、運営を継続できれば、多少の内部留保も蓄える試算が成立し、経営に現実味がある』との結論に至りました」


ならば船出か、と思いきや、まだ課題はあった。


「誰が会社を作るのか、代表を務めるのか。乙四資格者は? 地下タンク改修の500万円は?」


「もう代表は私がやりましょう、と。乙四資格者の件、これがラッキーでもあったんですが、長く他の地域で暮らし定年を迎えた人達が、Uターンして大田地区に戻ってきた。彼らがこの話を聞き、『おれ乙四持ってるよ。手伝うよ』と言ってくれた」

 

「500万の件、市の振興課・ふるさと納税担当者と協議している中で、クラウドファンディングの活用というアイデアが浮かんだ。杵築市に毎年、多額のふるさと納税をしてくださっている地元出身の方とも面談したのですが、『ぜひ協力したい』との申し出も頂いた。ならばこのクラファン、目標500万・達成の可能性があると思い至りました」



目標金額をゆうに突破 SS存続が決定!!


そして、取材(2022年1月)時点、なんと総計740万円以上の資金が集まったのだ。

 

「想像以上でした。目標金額を上回った部分は、ローリーの購入や、新しい計量機の入れ替えに当てようと考えています。晴れて、『合同会社おおた夢楽・大田SS』の発足が決まりました」

 

新規リニューアルオープンは、2月を目指している(取材時点)。もとよりSSの土地と上物は小関石油の所有であるがゆえに、良心的な線での賃貸が決まった。また運営が軌道に乗るまで、小関社長も支援を行うと約束してくれた。



 

さらには、二者である、地元の大分石油(本社・大分市、ENEOS系と出光系)も支援に乗り出してくれた。資金協力の面でも、サポートを行う。

 

取材時、偶然に小関石油を訪れていた、大分石油の高田販売課・西岡信幸課長は「これまで小関石油さんとお付き合いをさせて頂いていて、そしてこれからも地域の皆さんと一緒にSSに携われる。変わらず、精一杯やらせて頂きます」と力強く語る。

 

最後に、おおた夢楽の吉廣和男代表は「不安がないと言ったら嘘になる。けれども、地元の皆の意志・多くの方の厚意・サポートがあって、なんとかSS存続の道すじがついた。あとは頑張るだけ。やりますよ、私たちは」と意気を込めた。小関夫妻はそれを暖かいまなざしで見つめる。

 

地域の挑戦は始まったばかりだ。





月刊ガソリン・スタンド 2022年 3月号

P.60 「大分県杵築市、唯一SS消滅のピンチに、住民が取った方法」より


【 掲載ガソリンスタンド 】

大田SS / (同)おおた夢楽

(大分県杵築市)


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